貧民施設の食事
出世を遂げた後のブラームスの食事については、十分とは言えないまでも複数の証言がある。これに比べてハンブルク時代の食事がなかなか判明しない。メニューが紙で残るのはレストランくらいで、一般家庭のメニューが理由もなしに記録されるとも思えない。
思わぬ手掛かりは教会。教会直営の福祉施設、貧民のための救済施設の献立が保存されていることがある。農分社刊行の「世界の食文化」の18巻「ドイツ」にブラウンシュヴァイクの貧民施設における1週間の献立が掲載されていた。1842年という絶妙な時期のものだ。
青字が昼食、赤字が夕食とする。ちなみに朝食は記録されていない。
- 月 ひきわり大麦、ジャガイモ、バター付き黒パン、脱脂ミルク
- 火 ニンジン、ジャガイモ、ジャガイモスープ、脱脂ミルク
- 水 レンズ豆、ジャガイモ、バター付き黒パン、脱脂ミルク
- 木 えんどう豆、ジャガイモ、バター付き黒パン、脱脂ミルク
- 金 スウェーデンカブ、ジャガイモ、あら引きオート麦、脱脂ミルク
- 土 レンズ豆、ジャガイモ、バター付き黒パン、脱脂ミルク
- 日 白いんげん豆、じゃがいも、バター付き黒パン、脱脂ミルク
貧民施設の給食とはいえ気の毒だ。ブラームスの家は貧しかったことが頻繁に記述されている。これよりもっとシンプルな食事だったかもしれないし、これよりはマシだったかもしれない。いずれにしろジャガイモ中心で、肉は出ないと判る。ワインやビールはもとよりコーヒーだって現れない。ブラームスの伝記で言う貧乏とはつまりこの水準の話だということだ。
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