コラール前奏曲の元ネタ
ブラームスの最後の作品「オルガンのための11のコラール前奏曲」op122は、バロック以来の伝統にのっとり、「コラールの前弾き」という体裁をとる。実際には教会での演奏という側面は失われていながら、形だけを誠実にトレースした代物。既存既知のコラールをベースにした変奏曲となっている。
本日は11曲すべてについてその原曲の出所を一覧化しておく。
<第1番>「Mein Jesu,der du mich」わがイエスよわれを導き給へ
- Darmstadt Gesangebuch 1698
- 6小節目の後半から足鍵盤に低旋律が現れる。「H-G-E-C」とは第四交響曲冒頭と完全に一致する。
<第2番>「Herzliebster Jesu」敬愛するイエスよ
- Johann Crueger 1640
- マタイ受難曲BWV244第3曲に現れる。
<第3番><第11番>「O Welt,ich muss sich lassen」おおこの世よ我汝を去らねばならず
- 不詳。ニュルンベルク1555年頃
<第4番>「Herzlich tut mich erfreuen」わが心は喜びに満ちて
- 不詳。Wittenburg1552年頃
<第5番>「Schmuecke dich,Liebe Seele」装え愛する魂よ
- Johann Crueger 1649
- BWV654にある。
<第6番>「O wie selig seid ihr doch.ihr Frommen」おお汝、信心深い人々はいかに至福なるか
- Johann Crueger 1647
<第7番>「O Gott,du frommer Gott」お神よ、汝やさしき神よ
- 不詳。ブラウンシュヴァイク1648年頃
<第8番>「Es ist ein Ros'entsprungen」一輪のバラが咲いて
- 不詳。最古の出版は1599年。
- 讃美歌96番「エサイの根より」に一致。
<第9番><第10番>「Herzlich tut mich verlangen」心から私は願う
- Hans Leo Hassler1601年
- 書籍「ブラームスの辞書」の口絵は「10番の手稿譜」1ページ目になっている。
- バッハのBWV727のオルガンコラールと同一だ。BWV161のカンタータにも登場する他、マタイ受難曲にも同じ旋律が現れる。
以上。最古のものは1552年。ただし8番は出版こそ1599年だがもっとさかのぼる。最新のものでも1698年だ。
クララを失った傷心のブラームスがイシュルに戻って書き上げた11曲。ウィーンの自宅に資料を取りに戻ることなく書けたということは、これらオリジナルが頭に入っているということだ。ドイツの古い音楽がすっかりなじんでいたということだ。
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