華麗なる脱線
バロック特集と銘打った企画の真っただ中、いよいよヴィヴァルディにぼちぼち言及を開始する。ヴァイオリンの関与する器楽曲は、ただただ興味深い。1曲1曲が短くて音楽的意図が明確だから気持ちがいい。個体の識別が容易でない部分さえ慣れてくれば本当に心地よい。
バッハを起点にしたヴィヴァルディへの脱線は、ドイツ音楽史の流れと一致する。大国フランス、ロシア、オーストリア、英国に囲まれたドイツは統一を目指す民族的意図の中で、あらゆる分野でのドイツアイデンティティの構築をもくろむ。
音楽もしかりだ。バッハを復興する中で、ベートーヴェンからブラームスに至る流れをスローガンとしての「3大B」に埋め込む。ドイツ音楽を音楽史の本流と据え直す過程で、その源流たるバッハへの理解を深める。ドイツ語圏、それもプロテスタント圏内に生涯とどまりながら、音楽だけは広く情報収集に励んだバッハは、ヴィヴァルディ作品におびただしい数の編曲を施した。
バッハ研究の副産物としてヴィヴァルディ研究が進んだこと周知の通りである。
ヴィヴァルディは、バッハ在世当時最先端だったイタリアのそのまた最先端の音楽家だったこと、肝に銘じておきたい。
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