バッハの街
ご機嫌な書物のタイトル。マルティン・ベッツォルト著「Bachstaetten」という本の和訳版。2005年に刊行されている。
生地アイゼナハ、没地ライプチヒを筆頭とするバッハゆかりの街々をバッハの人生とともに書き記した好著。何と言っても都市が切り口になっている。バッハとのかかわりに軸足を置きながら、観光ガイドの目的も忘れていない。
著述の姿勢は圧倒的な細部へのこだわりと網羅性。原語スペリングへの配慮と和訳のバランス。作品や人生との接点を折り目正しく丁寧に辿る。持ってドイツに行きたい。出来れば地図もだ。
そしてそして読後におそってくるのは、ブラームスで同じことをした本はないのかという切迫した気持ち。鉄道の興隆によって拡大したブラームスの行動範囲をつまびらかにした本は現地ドイツでは出されていないのか。
都市とバッハというコンセプトが優れていればいるほど、無いものねだりが止まらない。同時にブログ上で「バッハ地名辞書」という企画を展開する意味が消滅させられている。
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