テレマンの一週間
バートピルモントというリゾートスパの常連だったテレマンは、当地に滞在する間、同地の領主や湯治客の午後のひと時のために「Scherzi melodichi」と題された7曲のトリオソナタを書いた。編成はヴァイオリンとヴィオラと通奏低音だ。ヴィオラダガンバではなく、はっきりとヴィオラが指定されているところが私的にはストライクゾーンだ。
興味深いのはその中身だ。当時慣習としては出版は6曲または12曲が一まとまりなのだが、7曲となっている。7曲なのにはもっともな理由がある。月曜から始まって一週間の曜日があてがわれているという周到さだ。
- 月 イ長調 TWV42::A4
- 火 変ロ長調 TWV42:B3
- 水 ト長調 TWV42:G5
- 木 変ホ長調 TWV42:Es2
- 金 ホ短調 TWV42:e4
- 土 ト短調 TWV42:g3
- 日 ニ長調 TWV42:D7
さらに各々のソナタがどれも冒頭に「Introduzione」(前奏曲)を置き、これに6つの部分がつながる7楽章制を採用している。調性の変化はない。前奏とフィナーレはどれも早いテンポに固定されている内側では、緩急織り交ぜた飽きさせない構造。最も長い曲でも7楽章合計で10分に満たない。調の重複はないばかりか、連続する2曲の調関係も古典派的な正当な関係は薄く、奔放さを感じる。明記こそされぬものの事実上の「ガヴォット」「ジーク」「コレンテ」「サラバンド」もしれっと混入していそうだ。
タイトルの「Scherzi」は「Scherzo」の複数形だ。古典派ソナタ楽曲の中間楽章に出現する舞曲楽章としての「スケルツォ」とは別物だ。洒落っ気だけでできている。金曜と土曜が短調というのもテレマンのウイットかとも思いたくなる。
温泉リゾートに長逗留の人々に曜日の感覚があるのかなどという小市民的つっこみは野暮である。
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