井戸振り見えろ
おバカなタイトルだが、少々のご辛抱を。
ブラームスに限らず作品の解説書を読んでいると、しばしば教会旋法が引用される。何やらわかりにくいと腰が引けているが、面倒臭がってもいられないので本日はそれらを整理する。まずはピアノの鍵盤を思い浮かべて頂く。本日に限っては黒鍵に用はない。話は白鍵で完結する。
- CからCまで イオニア調 教会旋法としての名前があるにはあるが、これは普通のハ長調だから、いちいち「教会旋法のイオニア調です」などと解説されたりはしない。
- DからDまで ドリア調 バッハのBWV538「ドリアントッカータ」で名高い。ブラームスにもドリアンリートがある。ニ短調の和声的短音階の中の「B」にナチュラルを与えればいい。
- EからEまで フリギア調 ホ短調の和声的短音階の中の「Fis」にナチュラルを与えればいい。第4交響曲の第2楽章冒頭のホルン。シャープ4個を付与された「ホ長調」だというのに、冒頭いきなり「Fis」にナチュラルが投じられる。いやはやな展開。ここに限らず短調音階の第2音が半音下がると「フリギア2度」と呼ばれる。
- FからFまで リディア調 ヘ長調音階の中の「B」にナチュラルを与えればいい。ベートーヴェンの弦楽四重奏曲第15番の第3楽章が名高い。ブラームスではロマンツェop118-5の24小節目の嬰ト音のトリルが怪しいと古来指摘されている。
- GからGまで ミクソリディア調 ト長調音階の中の「Fis」にナチュラルを与えればいい。てゆーか単なる「G7」。
- AからAまで エオリア調 これも単なるイ短調なので解説書で言及されることはない。
- HからHまで ロクリア調ギリシア旋法としては存在したが教会旋法としては捨てられた。主音の5度上の音・嬰ヘが黒鍵なるからかもしれない。
上記と同じ音程間隔を持つ音階は、理論的にはどの音を起点にしても想定出来るが、教会旋法は白鍵に限られている。ドリア調はD起点に限ると言うことだ。だからD起点以外の場合、「ドリア風」としか呼べないらしい。
「井戸振り見えろ」は、これらを順に覚える呪文だ。「イオニア」の「い」、「ドリア」の「ど」、「フリギア」の「ふ」、「リディア」の「り」、「ミクソリディア」の「み」、「エオリア」の「え」という具合にきて「HからHまで」は「ロクリア」の「ロ」にする。これで「いどふりみえろ」となる。
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