ショートオクターブ
記事「調の常用域」で、バッハの調性採用の実態を下記の通りと推定した。
- ハ長調 調号無し
- ハ短調 フラット3個
- ニ長調 シャープ2個
- ニ短調 フラット1個
- 変ホ長調 フラット3個
- ホ長調 シャープ4個
- ホ短調 シャープ1個
- ヘ長調 フラット1個
- ヘ短調 フラット4個
- ト長調 シャープ1個
- ト短調 フラット2個
- イ長調 シャープ3個
- イ短調 調号無し
- 変ロ長調 フラット2個
- ロ短調 シャープ2個
オルガンの構造を調べていたらこれに関連する興味深い話にたどり着いた。オルガン作品が上記の常用域内にとどまる限り、バスの音域には出現しない音が出てくる。例えば「嬰ハ音」だ。上記各調の中で「嬰ハ音」が「主音」になっている調はない。つまり根音にならない。同様に「嬰ハ音」が属音になる調もない。
バスの音域に「嬰ハ音」は不要なら、最低音周辺にわざわざパイプを作らずにコストと重量を減ずるという措置が頻繁に行われていた。同様に「変ホ」「嬰ヘ」「嬰ト」を加えた4音を最低音周辺に限って省略し、空いた鍵盤に「ニ音」「ホ音」を割り付けた。下記の通りだ。
オクターブの幅が白鍵2つ分短くなるので「ショートオクターブ」という。手の小さい人向けではない。どうせ使わない4音をオルガン製作の段階から削除するということだ。低い音を担うパイプは長いのだ。たった4音の省略ではあるのだがパイプの重量的には3割に達することもあるという。コスト、重量、手間を減じるという意味があった。
「調の常用域」と「オルガンの構造」どちらが「ニワトリ」なのだろう。
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