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2019年7月14日 (日)

お盆のファンタジー35

さすがのブラームスさんも今年ばかりはツアーコンダクターに徹したようだ。盆灯を待ちかねたように5名が立て続けに我が家にやってきた。ブラームスさんは手早く紹介してくれた。

ブラームス:「こちら最年長のブクステフーデさん」

ブクステフーデ:「ディートリヒと呼んでくれ」

ブラームス:「こちらはニュルンベルクのパッヘルベルさん」

パッヘルベル:「大ヨハンと呼んでくれ」

ブラームス:「こちら同郷のテレマンさん」

テレマン:「フィリップと呼んでくれ」

前に一度来たことがあるバッハさんはブラームスさんが紹介する前に「最年少のバッハです」と私に手差し出した。さすがのブラームスさんもこのメンバーの中では使い走り状態だったと見えてしきりに汗を拭いている。無理もない。

まずブクステフーデさんが「昨年は墓参ありがとう」と切り出した。昨年8月のドイツ旅行で、4名の墓参りをしたことに感謝してくれた。

玄関先の話し声を聞いて母が出てきた。「立ち話してないで中に入ってもらいなさい」といつもの仕切り癖が出ている。リフォームしたばかりのリビングに座ってもらうと、次女がビールを注いだ。乾杯の発声はブラームスさんに促されたパッヘルベルさんだ。

「プロジット」

一気飲みが終わったところでテレマンさんが私に「ところで今年、日本ではカイザーが交代したのか」と尋ねてきた。ドンピシャの時事問題である。「イエス」というと「カイザーではなくテンノーだと」とブラームスさんがしたり顔で割り込んできた。「日本は選挙で皇帝を決めたりせんようだ」と付け加える。選帝侯のことを言っているのだろう。「日本ではおよそ200年ぶりの生前退位です」「30年前の改元では、昭和天皇の崩御とセットだったから自粛ムードも目立ったけれど、今回はお祝い一色でした。慣れない10連休で大変でした」と、いつの間にか次女が説明している。前回の改元の時には生まれていなかった次女だが堂々たる講釈だ。「改元関連テレビ番組が盛んに放映される中、皇室の歴史を振り返る番組ではバッハさんの作品がBGMになっていました。」といちいち細かい。

 

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