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2019年7月 6日 (土)

アンドレアス・シュタイアー

ドイツのチェンバリスト。素晴らしいCDに巡り合って感謝するばかりである。

バッハの作品番号BWV960番台には興味深い作品が並んでいる。一言で申せば編曲ソナタとでも称すべき他の作曲家の作品をバッハがチェンバロ用に編曲した作品群だ。コンチェルトは970番台になっている。BWV971のイタリア協奏曲の知名度に及ばぬものの、侮れぬ作品が並ぶシュタイアーさんのCDは、かゆいところに手が届く選曲になっている。

ラインケンの「音楽の園」から11曲をバッハがチェンバロ用に編曲したBWV954、965、966が本当に貴重だ。キリリキビキビの爽快感が素晴らしい。けしてメジャーとは言えないラインケンの室内楽が無理なくしみ込んでくる。オリジナルを聴きたくなる。

メインはBWV964なのだろう。これは無伴奏ヴァイオリンのためのソナタイ短調BWV1003のバッハ本人によるチェンバロ編曲だ。無伴奏ヴァイオリン版とは全く別の趣きながらしみじみとした味わいがある。ヴァイオリンで聴く時の超絶技巧感は影を潜める。ヴァイオリンが3音以上の重音を鳴らそうと試みる際不可欠な間が発生しない分、音楽の流れがピュアになる感じがする。特に第3曲のしみじみとした味わいは特筆ものだ。極上のインテルメッツォを聴かされている気になる。

そしてBWV968だ。これも無伴奏ヴァイオリンのためのソナタ第3番ハ長調をバッハ本人がチェンバロに編曲したものなのだが、なんと第1曲だけが編曲の対象だ。他の楽章が残されていない原因は不明だが、そりゃ殺生だ。拷問に近い。シュタイアーさんはその空気を読んで第2曲以降をみずから編曲して演奏してくれている。全く違和感のない出来映えで感心する。

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