お盆のファンタジー36
令和改元の話が一段落すると、ブクステフーデさんが「ところで墓参のときについてきたネコはいったい何者だ?」と訊いてきた。セバスチャンのことだ。ペットボトルホルダーの意味を説明し、ツアーペットからブログペットに昇格したと説明した。次女が私の部屋から連れてきて差し出しながら「名前はセバスチャンです」と紹介すると、バッハさんが飲みかけのビールを吹いた。
「一人旅の退屈を紛らせてくれたし、みなさんのお墓で写し込むことで、確かに私が現地を訪れた証拠になります」と私が付け加えた。「ケラーで支払いをするときセバスチャンを含めてツザーメンというと受けが取れました」「みなさんの墓参を1度の旅行で達成するために知恵を絞りました」「その一つがセバスチャンです」
「それではセバスチャン閣下に墓参のお礼をしよう」とテレマンさんが切り出した。バッハさんが「貴殿の家にはチェンバロがあったはずだ」と言っている。たしか前回、電子ピアノでチェンバロの音が出ると説明していた。「酔いが回る前にな」とテレマンさんが促すとおのおの何か取り出している。私の「カノンニ長調を5人で演奏する」とパッヘルベルさんが宣言した。「日本で超有名ときいたんでな」と。
何やらもじもじとブクステフーデさんが困った顔をしている。「わしはヴィオラダガンバで通奏低音を弾きたいのだが…」と小声だ。困惑の意味がわかった。彼がガンバを弾くとヴァイオリンが一人足りなくなるからだ。「道中ブラームスさんにヴァイオリンを弾くよう説得したのだが色よい返事がなくてな」とブクステフーデさんが訴える。ブラームスさんはにやりとしながら「いやいやここには可憐なヴァイオリニストがおるのでな」と次女を指さした。
チェンバロはパッヘルベルさん。ブクステフーデさんがガンバ。バッハさんとテレマンさんと次女がヴァイオリンだ。緊急会合の結果、テレマンさんが第一ヴァイオリンで、次女がやはりセカンド。バッハさんがサードを弾くときまった。気の早いパッヘルベルさんがAを鳴らしている。次女が急いで2階にヴァイオリンを取りに走った。
感動的。やけに早いテンポ。
「この日のために何回かトマス教会に集まって練習した」「練習中は私がセカンドを弾いたよ」とジョッキ片手のブラームスさん。「ご息女は飛び入りの割には溶けているな」「楽譜よりテレマンさんをガン見している」とほめてくれた。
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