ブゾーニの辞書
記事「ほとんどトロンボーン」「出来る限りのクレッシェンド」で、シャコンヌの楽譜上に配置した音楽用語を手掛かりにブゾーニのシャコンヌ観を想像してみた。そのつもりで同編曲の楽譜上に存在する気になる用語を初出順に列挙してみる。
- 001 Andante maestoso,ma non troppo lento 作品冒頭の指定。
- 008 molto energico 付点のリズムが始まるところ。
- 012 sempre assai marcato 「常に十分はっきりと」
- 032 poco espr.
- 032 quasi f 前後を「p」にはさまれて。
- 040 leggiero ma marcato 相矛盾する表情を「ma」で結びつけ。
- 042 poco cresc
- 043 piu cresc
- 075 crescendo possibile
- 105 crescendo non troppo
- 117 mit Bedeutung 「意味深さをもって」
- 137 quasi Tronboni
- 149 un poco pesante
- 153 meno f
- 217 piu espressivo
ざっと気づいただけでこんな感じ。よく言えば「手取り足取り」、悪く言えば「箸の上げ下ろしから」だ。そもそもシャコンヌを含む無伴奏ヴァイオリン作品オリジナルの楽譜には、音楽用語は極端に少ない。テンポだって「知っとるやろ」とばかりに無表示だ。演奏に転写する際には演奏者のスタンスが求められる。それこそが解釈なのだ。楽譜に向き合い、その意図を聴衆にどう伝えるかは、演奏者に任されるはずなのだが、ブゾーニはその部分で演奏者を信用していない。だから「ああせい」「こうせい」と雄弁になる。
「poco」「meno」「piu」を駆使した繊細な指定が目立つが、元来それは演奏者の感性依存の領域だ。バッハの意思尊重でない証拠だと思う。
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