5つの練習曲
マッコークルの「ブラームス作品目録」の補遺「Anhang」のⅠaにはブラームスによる他作曲家作品の編曲が収められている。その第1番が「5つの練習曲」だ。原文では「Klavierstudien」となっている。
- F.Chopin Etude op25-2 Bearbeitung fur zwei Handen
- C.M..von Weber Rondo aus der Klaviersonate op24 Bearbeitung fur zwei Handen
- J.S.Bach Pesto aus der Sonate fur Violin solo BWV1001 Bearbeitung fur zwei Handen
- J.S.Bach Pesto aus der Sonate fur Violin solo BWV1001 Bearbeitung fur zwei Handen
- J.S.Bach Chaconne aus der Partita fur Violin solo BWV1004 Bearbeitung fur die linke Hand
1,2番はショパンのエチュードとウェーバーのロンドの編曲だ。「Bearbeitung」が「編曲」に相当する。わざわざ「2本の腕」用と断ってあるのは、第5番に左手専用の曲が置かれているからだ。元々何の断りも無ければピアノは両手で弾くものだから「fur zwei Handen」というお題目は珍しい。何を隠そうこの第5番がクララ・シューマン右手脱臼の際の見舞いにと書かれた作品なのだ。だから残る4曲には敢えて「両手で」と記されている。
5つが一まとめにされているのだが、不思議なことに出版の時期が2つに割れている。1,2番が1869年で、3~5番が1878年だ。元々1,2番で一組、3~5番で一組だった可能性が高い。3番と4番のタイトルをよく見て欲しい。実は、どちらの曲も無伴奏ヴァイオリンのためのソナタ第1番のフィナーレ4曲目のPrestoが元になっている。原曲がそのままピアノの右手に置かれているのが3番で、4番では原曲がそっくり左手に移っているに過ぎない。左右の手の完璧な独立性を追求する意図の反映だと思われる。
そして最後に右利きの諸君は、もっと左手も鍛えましょうとばかりに、左手専門の練習曲が置かれているという寸法だ。バッハの無伴奏ヴァイオリン作品に題材を求めているのは単なる偶然だろうか。
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