祖父ニコラウス
ブラームスの財産管理人にして親友。後半生の作品ほとんどすべてを出版したのがフリッツ・ジムロック。その人の祖父はニコラウスという。彼が1790年にボンで創業したのが楽譜出版社ジムロックだ。
おそるべしとはこのことで、1802年同社はバッハの無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータを出版した。これがおそらく同作品集全曲の最古の出版だと目されている。現在のベルリン国立図書館所蔵の手書き譜のうち、当時バッハ本人の自筆と信じられてきた妻アンナ・マグダレーナの筆者譜を底本とした出版で、そこそこ売れたという。同筆写譜が妻の手によるものと判明したのは第二次大戦後だから、当時はまだ本人の自筆譜だと思われていた。
のちにベルリンに本社移転させたのはブラームスとの交友で知られる孫のフリッツというわけだ。名うての古楽譜収集家のブラームスとフリッツ・ジムロックの会話に「バッハの無伴奏パルティータ」が話題にならない方が不自然だ。
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