タイムトライアル
シューマン全集の刊行にあたって、クララが望ましいテンポの確定についてブラームスに意見を求めたことは既に書いた。クララをそれに駆り立てたのは、シューマン作品の演奏について、クララが夫からしばしば速過ぎると非難された記憶だったという。
片手に時計を持って自分の演奏の平均時間を計るという作業を半年続けたらしい。真面目で几帳面な性格丸出しのクララである。先のブラームスへの相談は、それに疲れ果ててのことらしい。ブラームスの返事は「およしなさい」というトーンになっていたのはそのためである。
クララはブラームスの意見を受け入れたが、その作業が「拷問」に等しかったと述べている。「死のタイムトライアル」だ。
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