クララのチェック
ブラームスは新しい作品が出来上がると、出版前にクララ・シューマンに意見を求める習慣があった。最早それは出版に先立つ儀式と化していた。クララの選球眼をよっぽど信頼していたのだろう。ブラームスの作品リストには、当代屈指のピアニストにして、ロベルト・シューマン未亡人のお墨付き作品だけが並ぶことになった。
ブラームスが、これでもかと投げ込みクララ・シューマンがストライクと判定した作品だけが並ぶということがどういうことなのかを説明することは野暮である。むしろ興味深いのは、ストライクのリストではなくて、ボールと判定されて廃棄された側かもしれない。それらはもちろんリストになんかなっていない。投げた瞬間ボールとわかる球もあれば、きわどく外れた球もあるだろうが、言い訳せずに廃棄だ。愛好家としてはブラームスのボール球になら、デッドボールも痛くない。
ブラームス諸作品について優秀な審判員振りを発揮したクララは、愛するロベルト・シューマンの作品においても、同様だった。クララがロベルトの作品にあれこれと意見を述べたというより、作品が出来上がるソバから草稿を見て次から次へとピアノで弾いて見せたという。クララが現実に音を出すのを聴いて、ロベルトが草稿を手直しということもあったらしい。
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