魔女の変奏曲異聞
2007年5月1日の記事「魔女の変奏曲」で、「パガニーニの主題による変奏曲」op35がクララから「魔女の変奏曲」と呼ばれていると書いた。このほどその同じ箇所が「魔法の変奏曲」と呼ばれているケースを見つけた。元のドイツ語は不変でも翻訳の過程で、ニュアンスが割れてしまうことはよくあるが、本件は微妙である。
ブラームス宛の手紙の中でクララが用いた言葉だ。その同じ手紙でクララは、「パガニーニの主題による変奏曲」を隅から隅まで目を通したと述べている。各々の変奏曲が良くできていると誉める一方で、いくつかの変奏を削って1巻にまとめたらという提案をしている。
1巻から、第8変奏を省き、2巻からは4、7a、11、12、16変奏を削除して、全1巻にまとめるべきと言っている。同じテーマを元にした変奏曲を2巻も買ってはもらえまいと断じている。第2巻の冒頭が超絶技巧過ぎるとも付け加える。
これらの指摘の妥当性を論じる知識はないが、クララが相当細かく目を通して、思い切り踏み込んだ提案をしていることがよくわかる。もちろんこの助言はブラームスからの要請に基づくものだから、ブラームスがこれでヘソを曲げることはない。けれども、ブラームスがクララからの提案を採用していないことも忘れてはならない。
« 10000マルクの寄付 | トップページ | 伴奏者クララ »
コメント