奇妙な告知記事
どうやらクララは、ロベルト・シューマン作品の楽譜に記されたメトロノーム値を早くから疑っていた形跡がある。1855年「新ベルリン音楽新聞」に奇妙な告知記事が掲載された。
それは「シューマンメトロノーム値は不正確で、指示されたテンポは大抵、本人の意図より速くなっている」という趣旨だった。もちろん当時まだロベルト・シューマン本人は既に入院中であるから、この記事を読んだかどうかは定かではない。驚くべきはこの記事が、シューマン夫人の同意のもとに掲載されたということだ。
訂正含みのお詫び広告に近い。当代最高のシューマン解釈の権威であり、屈指のピアニストの肝入りである。クララには余程の確信と危機感があったに違いない。
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