財産管理の前任者
ブラームスが友人で経営者のフリッツ・ジムロックに財産管理を任せていた話はよく知られている。そうした管理の委託は、ジムロックが父親からジムロック社の経営実権を譲られた1870年以降だと思われる。
ブラームスの楽壇デビュウは1854年前後と見てよいから、そこからジムロックに財産管理を委託するまでの間、預貯金の管理を誰がしていたのかという疑問が湧く。
驚いたことに、どうもそれはクララらしいのだ。少なくとも1860年代中葉まで、ブラームスは演奏会や楽譜の刊行により獲得したお金を、クララに送っていたのだ。演奏会切り盛りや、日常のこまごまとした出費についてクララに相談を持ちかけている。金庫番をクララにお願いしていたようだ。やがてブラームスの地位が磐石になってゆくにつれて、お金の出入りも多くなり、預金管理という仕事自体が手間隙かかるものになっていった。演奏旅行に忙しいクララにとっても負担になることを配慮して、ジムロックに移管したと考えられる。
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