令和百人一首09
【017】在原行平
旅人は袂涼しくなりにけり関吹き越ゆる須磨の浦風
【018】在原業平
世の中に絶えて桜の無かりせば春の心はのどけからまし
【コメント】「兄弟歌合わせ」である。まずは兄の行平から。「袂」の読みから入る。「たもと」と読む。本来は肘から手首にかけての身体の部位を指すが、転じて「衣の袖」の意味になったという。説明不能ながら大好きな言葉で「令和百人一首」初出。さて摂津と播磨の国境をなす須磨には関所があった。関所は旅人の行き来を制限する。自由な行き来は出来ないのに風だけは越えて行くと嘆く。貴人が都から離れて蟄居する土地だったことも考慮されているらしい。源氏物語において「行平の中納言、関吹き越ゆると言ひけむ浦波」と言及されて名高い。弟は業平。伊勢物語の作者ではないかと古来取り沙汰されてきた。「伊勢物語」は和歌への題材供給の観点から源氏物語と双璧をなす。容姿端麗な上に歌才もある。「世の中に絶えて桜の」と大上段に振りかぶる気品とユーモアが微笑ましい。
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