令和百人一首15
【029】源義家
吹く風を勿来の関と思へども道も狭に散る山桜かな
【030】源頼政
庭の面はまだ乾かぬに夕立の空さりげなく澄める月かも
【コメント】西行に目をつむるならば、小倉百人一首に武士の採用は源実朝ただ一人なのだが、わが「令和百人一首」ではそうもいかぬ。いよいよ温まってきたところで武士の登場である。まずは源氏。鎌倉幕府創設の頼朝の曾祖父源義家。勿来は「なこそ」と読む。現在の福島県いわき市で陸奥の入り口だった。「来るな」の意味があることをとらえて、花散らす風を「来るな」と念ずるも、道狭しと散る山桜だと詠む。これが撰者・藤原俊成の目にとまり、千載和歌集に採用されたことで、彼は武名のみにとどまらず勅撰歌人として名を残すこととなった。勅撰入集はこれ一首だけとは言え、はずせぬ。一方の頼政は、摂津源氏の出。平家打倒に挙兵するも宇治川の戦いに敗れて平等院にて自刃。官位、従三位は武士として相当なもの。本作のしっとりとした透明感は新古今の予兆かとも。お気づきの通り「武士の台頭歌合せ」である。
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