令和百人一首03
【005】大伯皇女
二人行けど行き過ぎ難き秋山をいかにか君が一人ゆらむ
【006】大津皇子
百伝ふ磐余の池に鳴く鴨を今日のみ見てや雲隠りなむ
【コメント】2人は天武天皇を父とする同母姉弟だ。お姉さんは「おおくのひめみこ」と読む。万葉集に6首採られているが、全て弟を案ずる歌ばかり。弟の大津は日本書紀において「詩賦の起こるところ大津に始まる」と絶賛される人物。ところが我が子草壁皇子を皇位にと欲する持統にとっては邪魔者。謀反の罪を着せられ死罪。本作は辞世という位置づけだ。今後「令和百人一首」には辞世の句がいくつか現れるが本作はその最初である。身の危険を察知した大津は伊勢の斎宮だった姉を尋ねる。面会の後、大和に引き返す弟の帰路を案ずるのが姉の作品。姉6作全てが人々に読み継がれているのは、つまり大津の死が理不尽だった証拠だろう。全部採用したいくらいだ。個人の趣味として現在推量の「らむ」が大好きで「令和百人一首」選定のさいの大きなファクターになった。本作は現在推量の「らむ」初出である。命をキーにした「姉弟歌合わせ」という趣向である。
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