令和百人一首12
【023】伊勢
春霞立てるを捨てて行く雁は花無き里に住みや慣らえる
【024】中務
天の川川辺涼しき七夕に扇の風をなほ貸さやまし
【コメント】雁は秋にやってきて春に去ってゆく渡り鳥だ。秋ならば「初雁」か「月に雁」となるところだ。春霞が来てこれからお待ちかねの花だというのに去ってしまう雁をいぶかっている。元々花の無いところに住んでいるから花の良さが判らぬのだと自ら納得させようとしている。理詰めの歌なのだがユーモラスで嫌みがない。彼女は伊勢。紀貫之と同時代の女流歌人で勅撰入集185首を誇る。中務は「なかつかさ」と読む。伊勢の娘だ。「令和百人一首」中、母と娘はこの一組だけだ。風が涼しい七夕の川辺だけれど扇の風を貸しましょうかと問う。66首も勅撰入集を果たしているが小倉に採用されていないのでせめて私が「母娘歌合せ」とする。
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