令和百人一首18
【035】西行
願わくは花の下にて春死なむその如月の望月の頃
【036】頓阿
跡しめて見ぬ世の春を偲ぶかなその如月の花の下影
【コメント】西行の94首は新古今最多で勅撰入集253の大歌人だが元は北面の武士。「新古今の人麻呂」かはたまた「和歌界のシューベルト」か。本作は辞世に準ずる扱い。「如月の望月」はお釈迦様の入滅にあやかるものと思われ、実際に彼は2月16日に没している。およそ280年隔てた頓阿は西行を慕い、西行ゆかりの地に庵を構えたと詠う。「跡しめて」の初句にそのことが込められている。実は私は「跡」に弱い。漢字1文字、2音ながらその意味は状況によりさまざまに変化する。本作は「令和百人一首」の「跡」初出である。第四句のみの一致だけで、西行辞世の本歌取りだなどとはしゃいでよいものか自信はないが、もはやそうとしか思えぬ脳味噌になり果てた。只者ではあるまいと思ったら、19番目の勅撰和歌集「新拾遺和歌集」の撰者を務めた室町初期の大歌人だった。「とんあ」と読む。本歌取り冥利に尽きる「如月歌合せ」である。
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