令和百人一首20
【039】式子内親王
山深み春とも知らぬ松の戸に絶え絶えかかる雪の玉水
【040】宮内卿
薄く濃き野辺の緑の若草に跡まで見ゆる雪のむら消え
【コメント】賀茂神社斎宮として生涯独身であったが、さまざま詮索される式子内親王。当時の女子の宿命か「松」に「待つ」を掛けて歌うことが多い。本作もその流れ。「松」は「春を待つ」を暗示し、雪解け水を「玉水」と称して体言止めで締める。絢爛豪華な新古今世代にあって、定家、後鳥羽院、良経、家隆あたりに一歩も譲らぬ天才肌。彼女を始祖に、和歌の写実はますますその勢いを増してゆくかのよう。「新古今の和泉式部」かはたまた和歌の印象派か。
一方の宮内卿は後鳥羽院に才能を見出され、院主催の歌合せで活躍した。デビュー作と目される本作は、宮廷歌壇でセンセーションを巻き起こし、以来彼女は「若草の宮内卿」とあだ名された。二十歳そこそこで没したともいわれている。「跡まで見ゆる」「雪のむら消え」という新機軸。さらに緑を「薄く濃き」と細分して見せたのは史上初かも。名付けて「女子雪解け」歌合せ。
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