令和百人一首31
【061】後醍醐天皇
今はよも枝に籠もれる花もあらじ木の芽春雨時を知る頃
【062】楠正行
環らじとかねて思へば梓弓亡き数に射る名をぞとどむる
【コメント】第7クール、いよいよ南北朝時代だ。新葉和歌集に採られた後醍醐天皇御製。南朝歌人限定の新葉和歌集は勅撰和歌集に準ずる扱いを受けている。だから人によっては勅撰和歌集を22と記憶している。「木の芽が張る」と「春雨」が掛かるほか、「時を知る」には「蜂起の時は今」という意味を内包する。南朝方の同志に決起を促す意図があるという。楠正行は正成の息子。四条畷の戦いで敗れて自刃。出陣前に吉野の後醍醐天皇廟所に詣でて仲間と共に決死の決意を込めて詠んだ一首。「梓弓」は「射る」を語り起こし、「射る」は「入る」を想起する。鬼籍に入ることつまり還らぬ覚悟の表明だ。
言わずもがなの「南朝歌合せ」である。
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