令和百人一首39
【077】豊臣秀吉
露と落ち露と消えにし我が身かな難波のことも夢のまた夢
【078】木下長嘯子
亡き影にまた袖濡れて仕へけむ昔を今の賤の苧環
【コメント】076織田信孝からの名指しに応えて裏合わせの豊臣秀吉の登場だ。本作は聚楽第落慶の際に自ら筆記し、臨終に際して取り出させたと伝わる。異端と言えば異端なのだが、「露」「夢」の意図的反復など不思議な説得力も宿る。同語の繰り返しは禁じ手と知ってか知らずか、はたまたオフサイドぎりぎりで裏抜けを狙う狡猾なフォワードにも似た確信犯か。木下長嘯子の作品はその秀吉の一周忌に詠まれたもの。「お仕えした昔に戻りたい」と言いたいだけなのだが、「苧環」(おだまき)に事寄せた詠みっぷりに工夫を感じる。秀吉の一門衆として台頭したが関ヶ原の戦いでは不遇。京都東山に隠遁して文人として余生を送った。「秀吉ラブ」歌合せだ。
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