令和百人一首30
【059】宗尊親王
いかにせむ霞める空をあはれとも言はばなべての春のあけぼの
【060】吉田兼好
契り置く花と並びの岡野辺にあはれ幾代の春を過ぐさむ
【コメント】宗尊親王は鎌倉6代将軍。父は052後嵯峨院である。実朝の暗殺で源氏直系が途絶えた後、将軍職は京都の男の子持ち回りの様相を呈する。彼もその流れにある。歌人将軍といえば源実朝だが、6代目の宗尊親王も父譲りの才能で勅撰入集190の手練れだ。「枕草子」以来、「春はあけぼの」だから皆、春のあけぼのには飽きていることを、サラリと逆手に取る。初句で「どうしよう」と一旦困った振りはするものの、後は一気。特に「言はばなべての」に主眼があろう。「月並みを恐れぬ気概」とでも申したい。月並みをリスクと認識しながら、そうせざるを得ないと切り返すこと自体が形容詞化している。おそるべし。
吉田兼好は名高い随筆「徒然草」の作者。実は二条為世の弟子で、二条派室町初期の代表歌人。「花と並びの岡」は、自らの庵が「京都双ケ岡」にあったことを暗示している。これもまたポカポカと温かい野辺のゆりかこの上にある。
かくして「春のあはれ」歌合せ。
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