選んで並べるという芸術
勅撰和歌集には部立てがある。収載するお歌のジャンル分けと思っていい。最初の勅撰和歌集「古今和歌集」で確立されて以来のしきたりだ。何といっても春夏秋冬で、それに恋を合わせた5部がその柱である。「賀」「羈旅」「哀傷」「神祇」「釈教」が必要に応じてこれに続き、さらにその他ともいうべき「雑」が加わる。ニーズが多い春や秋、そして恋は上下に分割されたりもする。
お歌自体の出来もさることながら、どの歌を選ぶかは撰者の腕の見せ所であるばかりか、選んだ歌をどう並べるかにも心が砕かれる。春夏秋冬と並ぶ季節4部の内部は、それぞれの季節の進行が正確に反映する。桜のお歌はけして梅には先行して置かれないのだ。夏以下も同様だ。恋にしても理屈は同じで、男女のやりとりの定型がかくあるべしと示される。最初から順に読んでなんぼの仕組みだ。
さまざまな歌人の歌を集めながら、その集成としての和歌集には一貫した思想が宿る。選集時の時代背景とともに勅撰和歌集撰者の歴史観、和歌観、審美眼が問われることになる。そこを信じてこその「令和百人一首」である。
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