令和百人一首42
【083】徳川宗武
永き代の橋を行き交ふ諸人は自ずからにや姿ゆたけき
【084】冷泉為景
染めて聴く心木の葉よ鳴く蝉の声も色ある森の時雨に
【コメント】さあいよいよ江戸時代だ。徳川宗武は8代将軍徳川吉宗の次男だ。思うに徳川家最高の歌人。荷田春満や賀茂真淵に師事した文化人である。和歌の他、有職故実、儒学、雅楽、服飾にも造詣が深い多才の人。本作冒頭「永き代の橋」とは、隅田川にかかる永代橋を指す。橋の名前のせいか通行人みんな余裕ありげに感じると指摘する。冷泉為景は名高い儒学者藤原惺窩の長男。歌道の宗家二条や京極があっけなく途絶えたのに対して冷泉家のみが今日まで存続する。しばしば天皇に和歌を講義した。「心木の葉よ」が焦点。木々が染まることと、蝉の声に聴き入ることを同時に走らせる対位法だ。
よって「江戸の風流歌合わせ」である。
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