令和百人一首49
【097】森鴎外
大君の任のまにまに薬箱持たぬ薬師となりて我行く
【098】与謝野晶子
戦いは見じと目閉ずる白塔に西日しぐれぬ人死ぬ夕べ
【コメント】いよいよ明治時代に入る。大文豪にして帝国陸軍軍医総監。史上最年少で現在の東大医学部に入学。入隊後4年のドイツ留学を経て、「舞姫」でデビュー。和歌も多数残している。本作は日露戦争に軍医として出征する際の歌。第二句「任」は「まけ」と読む。「明治天皇の勅命で軍医として赴くけれど薬箱は持たないよ」と独特のユーモラスな語り口。源実朝、伊能忠敬とともに私の歴史上の大好き人物ベスト3を形成する。一方の与謝野晶子。旧姓は鳳、与謝野鉄幹と結婚。短歌、反戦詩、源氏物語翻訳など多岐にわたる。「令和百人一首」中明治以降の生まれは、彼女と私だけだ。本作は日露戦争時奉天に立っていた塔を主人公とするとされている。厭戦の色濃い代表作。16歳年長の鴎外は、与謝野晶子の作品に当初距離をおいていたが、やがて理解を示すに至る。源氏物語訳出にあたり中巻の校正を引き受けたという。
「日露戦争歌合せ」
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