令和百人一首47
【093】和宮親子内親王
着るとても甲斐無かりける唐衣綾も錦も君ありてこそ
【094】上田秋成
宮の内は男をみなも白妙の衣ゆゆしみ夏立ちにけり
【コメント】和宮親子内親王は「かずのみやちかこないしんのう」とお読みする。日本史的にはもっぱら「皇女和宮」と呼び習わされている。仁孝天皇の第八皇女として生まれ、井伊直弼の公武合体政策により14歳で将軍家茂に嫁す。さまざまな困難にあったが夫婦仲だけは円満だったとされる。夫家茂は長州征伐のための大阪在陣中に急死。本作は上方土産にと約束した西陣の晴れ着が届いた折に詠んだもの。「晴れやかな衣装もあなた様あってこそです」と嘆く。以降落飾して静寛院と号した彼女の功績はまことに大きい。15代将軍慶喜の謝罪を皇室に取り次ぐという出色の役割をこなした。
上田秋成は大阪の遊郭で私生児として生まれ、豪商の養子となった。以降、医者、文筆家として経歴を重ねる才人。本作は宮中の衣替えの歌だ。男も女もホワイト系の服になったことで夏の到来を実感するというもの。原因の「み」ですなんぞ、こざかしい理屈を振り回すのもはばかられる。「衣ゆゆしみ」の語感で勝負ありな気がする。ゆったりと飄々と、あくせくせずにするりと心に入りこむ。意外なことに小倉百人一首の持統天皇御製「春過ぎて夏来にけらし白妙の衣干すてふ天の香具山」の本歌取りとされる。
だから「衣歌合わせ」だ。
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