上より下
「脳内補正語」第4弾。
お歌の中で使われた場合の収まりの話。単語またはその一部としての「上」と「下」の比較だ。
まずは「上」から。
- 石走る垂水の上の早蕨の萌え出づる春になりにけるかも
- 花の上の暮行く空に響き来て声に色ある入相の鐘
- 諏訪の海の氷の上は霞めどもなほ打ち出ぬ春の白波
続いて「下」は以下の通り。
- 薄く濃く静かに匂へ下枝まで常盤の橋にかかる藤波
- 行き暮れて木の下影を宿とせば花や今宵の主ならまし
- 跡しめて見ぬ世の春を偲ぶかなその如月の花の下影
- 雪とのみ桜は散れる木の下に色変へて咲く山吹の花
- 花に花靡き重ねて八重桜下枝をわきて匂ふ頃かな
- 雪折の竹の下道踏み分けて直なる道を世々に知らせむ
数の上で「下」の勝ち。収載外で拾っても「下露」「下隠れ」「下萌え」「下葉」などセンサーにひっかかる言葉が多い。単なる物理的上下の話にとどまらぬ微妙なニュアンスの付加がある。角をそぎ落すというか、丸めるというか。感覚的には意味の縮小とまでは申さぬが「穏和化」とでも位置付けたい。
音楽用語でいうなら「mezzo」か「poco」あたり。
« 呪文としての「ぞ」 | トップページ | 現在推量 »
« 呪文としての「ぞ」 | トップページ | 現在推量 »
コメント