令和百人一首50
【099】飛鳥井雅親
四つの海静かになりぬ士の矢並収まる御代を待ち得て
【100】明治天皇
四方の海皆同胞と思ふ世になぞ波風の立ち騒ぐらむ
【コメント】今ごろになってのこのこと室町時代の貴族、飛鳥井雅親の登場。足利義政が後花園天皇に執奏して編纂が決まったものの応仁の乱でとん挫した勅撰和歌集の撰者になるはずだった人。とんだエア撰者だがひとかどの歌人。本作は応仁の乱の終息を詠んだ。「四つの海」は天下のこと。「士」は「もののふ」と読む。焦点は第三句にある。「矢並み収まる」とは「戦乱の収束」を暗示する。美しい言い回しだ。長い戦乱がやっと収まったという感慨が結句「待ち得て」ににじみ出る。その後延々と戦国時代が続くことはこの際棚上げ。そして明治天皇だ。日本の近代化の象徴。本作は日露開戦の時の御製。「周囲みな同胞がいるというのに何故いさかいが起きるのだろう」といぶかっておられる。反戦の御心の投影だろう。昭和天皇は太平洋戦争の開戦を決めた御前会議の最後にこのお歌を詠みあげたと言われている。
大トリは小倉百人一首と同じく天皇御製と決めていた。だから臣下の雅親を歌合せの左方に据える異例の配置となった。「四つの海」にかこつけた「反戦歌合わせ」である。
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