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2020年7月14日 (火)

お盆のファンタジー39

乾杯のジョッキをあっという間に飲み干したブラームスさんが待ちかねたように口を開く。「道中音楽の話が全く出なかった」「興味深い日本のポエムの話ですっかり盛り上がった」鴎外先生も遅れて飲み干して加わる。「私の作品を選んでくれてありがとう」どうやら「令和百人一首」のことを言っているらしい。「31音の短詩とは優雅なことだ」「賛美歌にも同一の音節構造を持つテキストに旋律を共有させる仕組みがあるけれど日本のは繊細だな」とブラームスさんが得意げに話す。「和歌を選んで配置することも十分に芸術ですね」と鴎外先生がポツリとつぶやいた。「道中2人で全百首を味わってきたよ」というとブラームスさんが「いやはや楽しい」と満足気だ。

「それにしても和歌の伝統とはさすがだな」とブラームスさんが溜息をつく。「少なく見積もって1200年も同一の詩型が維持されているとは」どうも道中の鴎外先生の講義はそうとうな細部にまで及んでいたようだ。

鴎外先生はやっと「選んでいて楽しかったろう」と少し話題を変えた。「はい」と私。「時代順の配列」「日本史と和歌史のバランス」「本歌取りの優先的採用」と続けても鴎外さんはうなづくばかり。「加えて和歌へのリスペクト」とブラームスさんと鴎外さんが同時に口走ったのには驚いた。驚いてばかりもいられないので「同時に古典へのリスペクト」と私が切り返すとブラームスさんは立ち上がって私をハグしてくれた。鴎外先生は笑いながら「ディスタンス、ディスタンス」と言っている。

「ブラームス先生を筆頭とする欧州の古典音楽の作曲家たちの話題なら一晩中語っていられるのだから、自分の国の歌人についてそれが出来ないのは文化的に恥ずかしい」というと鴎外先生は小さくガッツポーズを作ってくれた。「古今の優秀な作品に数多く触れてそれについて語れることは生涯の宝になる」「これらを出来るだけ暗記しておいて、ふさわしい場面で思い出せることが人生を豊かにする」などと巨匠二人の前で調子に乗ってしまった。

「古典古典古典じゃな」と鴎外先生がポツリとつぶやく。「古典を知り尽くした上でないと乗り越えることも出来ん」「壊すべき古典のない無手勝流では、やがて廃れる」と堰を切ったようだ。「陸軍用語の前衛、フランス語でいうアヴァンギャルドは、芸術用語としては危うい」「軍隊用語なら奇襲を受けぬよう本体に先行する小隊の意味で、本隊は必ず前衛の後を追うものだが、芸術は単なる異端との境目が曖昧だ。用心せねばな」と陸軍ネタにはやけに明るい鴎外先生だ。「だからじゃ」とブラームス先生が割り込む。「わしがドイツバロックにのめり込むのも同じ理屈だよ」「未来の音楽には興味はなくて、ただ未来に残る音楽を書きたいと思ったら歴史を顧慮せざるを得ぬ」「わしなんぞはけして筆頭ではないんだよ」

 

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