奇跡のラルゴ
グールド御免の記事連発。今度は協奏曲第5番ヘ短調の話題。例によってまたまた緩徐楽章。
バッハのピアノ協奏曲は元々あった何等かの楽器による協奏曲の焼き直しだということは何度も申し上げてきた。この5番もそうだ。ところが5番は嬉しい例外だ。原曲ト短調ヴァイオリン協奏曲をチェンバロ協奏曲に転写するにあたり、第二楽章だけはオリジナルが破棄され、差し替えられたといわれている。唯一のチェンバロ独奏オリジナルだ。
変イ長調ラルゴが新たに添えられた。ごくごく最後以外、伴奏に回る弦楽器たちはピチカートで控えめに刻む中、あり得ぬほど繊細な旋律が流される。グールド最高という瞬間が連続する。わずか21小節の至福のときだ。この楽章にハミングを入れないのもまた1つの見識だろう。
コメント