半音階的幻想曲とフーガ
バッハのクラヴィーア作品の一つでニ短調BWV903を背負っている。「半音階的」というのがロマン派諸氏の琴線に触れたのか、バッハが忘れられていた時代にも、例外的に人気があったという。ブラームスの伝記の中でもブラームスのお気に入り作品の一つして言及されていることが多い。
「半音階的」というネーミングの元になったのが、後半のフーガの主題だ。「A-B-H-C」という具合に半音上昇が3回連続して立ち上がる。何と言ってもこれは「BACH」のスペルを並べ替えた代物だ。このあたりの曰くありげなところが、ロマン派好みだと思われる。3小節目には「E-F-Fis-G」も現れて半音の上行を強調するしかけになっている。
実はこの一連の半音進行を聴くと思い出す作品がある。「H-His-Cis-Cisis-Dis」と立ち上がるインテルメッツォop116-6には、この手の半音進行が入れ替わり立ち替わり現れる。拍子も同じ4分の3だ。2つ目のHisが、同時に鳴らされる「H」と7度でチャーミングに衝突するのを楽しむ音楽だ。もちろんこちらはフーガにはなっていないが、ブラームスのバッハラブの反映かもしれない。
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