トッカータ
即興的な小品を意味する「トッカータ」は、バッハの初期鍵盤作品として知られている。BWV番号で申せば910から916までの7曲である。何かにつけ例外のト長調BWV916を除いて、序奏→フーガ→間奏→フーガという枠組みになっている。音楽之友社刊行の作曲家別名曲解説ライブラリー「バッハ」には、これら7曲は収録されていない。嬰へ短調BWV910以外には、自筆譜が残っておらず、他者の写譜が頼りの危うさが名曲扱いされていない原因なのかもと勘繰るばかりだが、どうしてどうしてこれが相当楽しめる。
- BWV910 嬰へ短調
- BWV911 ハ短調
- BWV912 ニ長調
- BWV913 ニ短調
- BWV914 ホ短調
- BWV915 ト短調
- BWV916 ト長調
最後の7番ト長調だけが3楽章制を採る。写本によっては「コンチェルト」とタイトリングされているものもあり、様式的にも浮いた存在になっているらしい。
諸賢はお気づきだろう。この7番を何かの拍子に紛れ込んだ異端だとするなら、真のトッカータは6曲になる。偶然と笑い飛ばす度量は持ち合わせていない。バッハにとっての常用調、インヴェンションとシンフォニアを構成する15の調に含まれない嬰へ短調が一際目を引く。、
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