バッハのフーガ
10代からブラームスはバッハに親しんでいた。それは一生背負うブラームスのキャラクターの一部になった。
だから、10代でのコンサートで弾いた中にも「バッハのフーガ」が出てくる。「バッハのフーガ」はピアニストとしてのブラームスの重要なレパートリーでもある。楽友協会の音楽監督在任中の選曲にも「バッハのフーガ」が現われるし、クララのとの最後の対面でも「バッハのフーガ」が弾かれたとされている。
ところが、愛好家として残念なのは、数ある「バッハのフーガ」のうちのどれなのか、さっぱり明らかでないことが多いのだ。ブラームスの伝記は本人が日記を残していないこともあって、多くの親しい知人たちの証言の堆積と言ってもいい。「バッハのフーガ」が弾かれたことを証言する知人の多くが、具体的にどの作品かに言及していないと思われる。BWV番号という便利なものが無かったことが大きい。最近不備も指摘されるBWV番号だが、膨大なバッハ作品の固体識別への寄与は計り知れない。弾かれた作品が「バッハのフーガだな」とまでは判っても「どれ」と断ずるのは相当難しいのだと思う。
さらにクラヴィーア用のフーガばかりでなくオルガン用のフーガもピアノで弾かれた可能性もあるのだから固体特定は輪をかけて難しくなる。
「半音階的幻想曲とフーガ」はむしろ貴重な例外と解するべきかもしれない。
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