グルーピングの妙技
大好きなバッハのヴァイオリンソナタ第4番ハ短調の第四楽章の話をする。
4分の2拍子アレグロ。軽快というよりは厳粛。5小節目チェンバロに現れる16音符のグルーピングが特徴的だ。連続する4個の16分音符の後ろ3つがスラーによって束ねられることで、「1+3」のフレーズを構成する。これ以降チェンバロにもヴァイオリンにも頻繁に現れて同楽章の性格を規定することになる。
やがて2番カッコを抜けてリピート記号の直後のヴァイオリンに「1+3」が現れ、念押しして後半が始まる。55小節目のことだ。その念押しをさっそく逆手にとる。わずか4小節目の59小節目になると16分音符が3個一組のグルーピングに変わる。2小節間4拍分の16分音符16個のうち最初の1個を除く15個が、3つずつに束ねなおされる。
チェンバロのパートとの間で拍節の軽い衝突がおき、2小節間リズム感が曖昧になることで直後の61小節目のシンコペーションが殊更強調されることになる。同じことが85、104の両小節でも起きる。従来通りの「1+3」もめまぐるしく混在することで効果が増強される感じがする。写真は104小節目。
音符の束ね方1つでリズム感を自在にコントロールするのはブラームスの得意技だ。バッハで見かけると感慨深いものがある。
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