異例のソナタ
断りなくヴァイオリンソナタと言えば、主役はヴァイオリンでピアノは伴奏と目される。バッハの時代にはピアノではなくチェンバロになるけれども、ヴァイオリン主役に変わりはない。
バッハのヴィオリンソナタト長調BWV1019は、異例である。第三楽章は主役のヴァイオリンがまるまる休みになる。
写真はヴァイオリンのパート譜。その中、赤く囲んだのが話題の第三楽章。すぐ上の16というのは第二楽章の16小節目であり、直下のAdagioはもう第4楽章の冒頭だ。アレグロの第三楽章はヴァイオリンが「tacet」されている。
交響曲など大規模管弦楽曲で、その中間楽章において打楽器や金管楽器がまるまる休みということは、ブラームスでも珍しくないが、二重奏の7つの室内楽で片方がまるごと休みという楽章は存在しない。
しかもだ。しかも主役抜きで奏でられるその第三楽章は美しいのだ。コンサートで取り上げられた際、ヴァイオリニストはこの間どうしていたらいいのだろう。
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