ユニゾンの力
カンタータ第140番「目覚めよと呼ぶ声が聞こえ」の白眉は第4曲のコラールにある。編成は、独唱テノールに第一第二の両ヴァイオリンにヴィオラと通奏低音が付き従う形。弦楽三部と通奏低音を伴奏に従えてと申すよりもむしろトリオソナタだ。
第一第二のヴァイオリンとヴィオラは全74小節を貫いてユニゾンとされる。
上記はベーレンライター社から刊行されている新バッハ全集だが、ハ音記号で記譜されたパートには、両ヴァイオリンまで併記されている。この状態が最初から最後まで一貫して維持される。だからご覧の通り、楽譜の見てくれはトリオとなる。事実上3パート合同の弦楽器パートは、ヴィオラ御用達のハ音記号なのだが、C線を必要とする音は巧妙に回避されている。
理屈は邪魔だ。B音のアウフタクトから深々とえぐって立ち上がる旋律の色艶は比類がない。主旋律として表舞台に出たかと思えば、テノール独唱の脇役に引きこもる。その間、力強いユニソンが一瞬たりとも崩れることはない。
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