第三のドッペル
長くブラームスを愛好する私にとって「ドッペル」と言えば「ヴァイオリンとチェロのための協奏曲イ短調op102」のことだ。正式な名称の中に「ドッペル」(二重)の文言は現れないにもかかわらず、そうした刷り込みになっている。愛好家一般の平均値からははずれているとの自覚ももっている。
一般愛好家の平均値という切り口ならばバッハの「2つのヴァイオリンのための協奏曲BWV1043」だろう。私とて大好きだ。娘がヴァイオリンのレッスンを受けている頃、いつの日か二人で弾きたいと慣れないヴァイオリンに持ち替えて第一楽章を必死で練習したものだ。
このほど第三の「ドッペル」に出会った。某ショップをうろついていて、マンツェとポッジャーというバロックヴァイオリン界のスター2名の演奏を収めたCDを入手した。もちろんドッペル狙いだ。ところが収録曲の中に「BWV1060」の記載を見つけて軽い衝撃を受けた。
「BWV1060」とは、チェンバロ協奏曲として伝わっているものの、現在では「ヴァイオリンとオーボエのための協奏曲」として名高い。大好きな曲だ。何らかの独奏楽器のための協奏曲からバッハ本人がチェンバロ協奏曲に編曲したというものだ。古来もとの独奏楽器の復元が試みられてきたが、「ヴァイオリンとオーボエ」という組み合わせはほぼ定説と化している。
先に掘り出したCDの演奏者にはオーボエ奏者の名前がない。つまり独奏オーボエのパートをヴァイオリンで弾いているということだ。
BWV1043のドッペルと違い独奏両パートの扱いが均質でないことから、片側をオーボエとする復元が説得力を獲得しているのだが、弾かれてみるとはまる。もともと大好きだからか。
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