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2021年1月 7日 (木)

バロック特集の収穫

バロック特集を企画したキッカケは、ブラームス自身が持つ古い音楽への細やかな愛情だ。古楽譜収集家あるいは校訂者としての深い知識は、まさにそれらの音楽への愛情に立脚している。

ブラームスとバッハの浅からぬ関連を元に、まずはバッハ特集をと思い立ったのだが、そのバッハの記事を備蓄する中から、少なからぬ量のヴィヴァルディネタが派生した。ヴィヴァルディの創作の基幹的な領域であるヴァイオリン作品を切り口にイタリアンバロックへの興味が広がるのにさしたる時間はかからなかった。

そこで見たのは、当時の音楽の中心地にして最先端のイタリアの威光だった。

ソナタ形式を頂点に据えて、欧州に君臨したかに見えるドイツ音楽を、イタリア側から眺める感じだ。イタリアから見ればドイツ音楽は国民楽派でしかないという確信めいた衝撃が走った。走りはしたのだが、ドイツ音楽の価値は減ずるはずもなく、単に視野が広がる結果となった。そして興味は同時代のドイツ音楽、いわゆる「ドイツバロック」に向かう。

ブラームスとバロックの最大の接点としてのオルガン音楽を起点に、コラール全体に間口が広がった。

一方でイタリアとの比較を容易にするため、ヴァイオリンも切り口に据えたことは、よい判断だった。ヴィヴァルディ、ヴェラチーニ、ジェミニアーニ、タルティーニらまばゆい巨星たちに対して何ら遜色なき多彩な個性に気づかされたのも大収穫と申してよい。その成果の一端は今後順次披露させていただくこととする。

ヴィヴァルディやタルティーニにとっての「四季」や「悪魔のトリル」と同様に、「カノン」にとどまらぬパッヘルベルの魅力にも気づかされた。ブクステフーデ、ワルター、エルレバッハ、ビーバー、シュメルツァーとヴァイオリン音楽をキーに次々と間口が広がった。一部チェンバロ作品にも興味が拡大した。

そして忘れてはならぬテレマン。当代随一の人気作曲家だったわけが理解できた。

こうしてバロック漬けとなった脳味噌で聴くブラームスには別の魅力が宿ることとなった。これは確信だ。より深いバロック音楽への興味と理解の上にブラームスを聴く喜びは格別である。

 

 

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