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2021年2月28日 (日)

ノッテボーム

某CDショップをうろついていて売り場の隅のワゴンに詰め込まれていたセール品を何気なく手に取ったCDのジャケットに「Die vier Jares Zeiten」と書かれていた。ドイツ語で「四季」のことだ。

手に取ってみたらなんとヴィヴァルディの「四季」のピアノ連弾版のCDだった。価格価格が690円と手ごろなこともあってひとまず買い求めた。

帰宅して再生した。昼下がりのカフェででも鳴っていたらすんなり入ってきそう。「四季」はヴァイオリンに限ると思っていた潜入感はやはりお邪魔だった。

ところがだ。連弾版「四季」の余白にサプライズが埋まっていた。「バッハの主題による変奏曲」の作曲者「Gustav Nottebohm」とある。「1817-1882」という生没年と作品の出版年「1865Vien」を見て腰が抜けそうに驚いた。音楽学者ノッテボームだ。19世紀最高のベートーヴェン研究家だ。

何を隠そうそのノッテボームはブラームスの親友だ。当時勃興した音楽学の泰斗たちと親しく交友したブラームスの大親友にして当代最高のベートーヴェン研究家である。1882年10月26日にノッテボーム重体の報に接しグラーツに駆け付けたブラームスは同31日の臨終に立ち合い、葬儀費用を負担した。CDにある「没年1882」で矛盾がない。ノッテボームが所蔵していた膨大な数の古い楽譜はブラームスに相続されて現代にいたっている。

現代ではノッテボームは音楽学者として記憶されているから作品を収録したCDはレアだ。バッハの主題と言いながらCDの作品解説は原曲について沈黙している。「Sarabande Andantino」とだけ書かれている。もしかすると実は実はノッテボーム自作の主題ではあるまいななどと妄想も膨らむ。

濃い偶然だ。ノッテボームに反応する自分の脳みそをうれしく思う。ヴィヴァルディとブラームスのお導きに違いない。

 

 

 

 

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