混乱の源泉
BWV596は、ヴィヴァルディの調和の霊感op3-11をバッハ自らがオルガン独奏に編曲したものだ。ブラームスはこれを自ら筆写してまでクララにプレゼントしたのだが、バッハの長男フリーデマンの作品であると考えていた。
このほどそうした錯乱の原因が分かった。1774年頃のことだ。父ヨハン・ゼバスチャンの膨大な楽譜を相続した長男ヴィルヘルム・フリーデマンは、経済的な困窮から遺品楽譜の一部を売却して換金しようと企てた。買い手との交渉の中で、故意か過失か問題のBWV596を自作と位置付ける一方、自作のいくつかを父作とした。相続者本人のこの工作が世間の認識を左右し、同曲は長く「長男フリーデマン・バッハ作」とされてきた。
ブラームスは自ら筆写するほど気に入って、さらにクララにプレゼントまでしたのに、これを「ヴィルヘルム・フリーデマン・バッハ」作であるとクララに申告していた。信じ切っていた証拠だ。
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