調和の霊感
ヴィヴァルディの合奏協奏曲集op3の通称だ。独奏楽器を異にする様々なコンチェルトの集合体である。このうちの11番、「2つのヴァイオリンとチェロのための協奏曲」ニ短調を学生時代に弾いた。ヴィオラで演奏に加わったことがある。
そしてバッハはまさにその作品3-11をオルガン協奏曲に編曲している。BWV596という番号まで与えられているのだ。20世紀に入ってからの研究の結果、バッハ本人の編曲であることが突き止められているが、19世紀には論争もあったようだ。ブラームスはこれを、長男のウイルヘルム・フリーデマン・バッハの手による物と考えていた節がある。
BWV596のブラームスによる筆写譜が現在に伝えられており、おそらく1854年かその翌年にブラームスからクララに贈られたものだ。「愛するクララへ、デュッセルドルフにてヨハネスより」と書かれた表紙には「フリーデマン・バッハ」と添えられているという。
ブラームスは1867年3月17日、ウィーンの楽友協会ホールでの彼自身のリサイタルで、この作品を弾いている。154年前の今日だ。
そしてこの貴重なブラームスの筆写譜は、現在ツヴィッカウにある。ロベルト・シューマンハウスの所蔵だという。1896年5月に逝去したクララの遺品に含まれていたということだ。クララはこの楽譜を40年以上大切に保管していたのだろう。そしてあくまでもあくまでもクララはロベルトの妻だから、ロベルト・シューマンハウスの所蔵になっているのだ。そこにブラームスの思いがどれほど込められていたとしても、シューマン夫妻の結婚生活14年の長さを遙かに超えて保管されていたとしても、クララはロベルトの妻だ。
ヴィヴァルディとブラームスの数少ない接点だが、ヴィヴァルディ、バッハ親子、シューマン夫妻そしてブラームス。この筆写譜には音楽史に名を残す巨星たち6名が関わっている。
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