昭和の香り
大好きなシモンゴールドベルクさんのお話だ。
ブランデンブルク協奏曲も録音していた。ヴァイオリン協奏曲は1975年66歳の録音であるのに対して、こちらは1958年。49歳だ。6番でヴィオラを弾いてくれている話はすでにしておいた。興味深い演奏が多い。突っ込みどころ満載ともいえる。
そりゃあそうで、私の生まれる1年前の録音だ。古楽器での演奏が台頭する前のスタイル。ステレオ録音なのが不思議な感じ。ブランデンブルク協奏曲のステレオ録音としては最古の部類ではあるまいか。
大見得を切るようなクレッシェンドも珍しくないし、ほんのりポルタメントテイストの音の処理も散見される。ソロを取り囲む総奏群の分厚い響き。荘厳という形容がふさわしいバックに支えられたソロたち。
古楽器演奏が一般化し、もはや芸術的実験の段階をとうに過ぎた現代の演奏に慣れた耳には、なじまぬ風情ながら、ちっとも下品ではなく、私のようなオールドファンには懐かしささえ感じられる。4番がリコーダーではなくフルートだったり、6番冒頭のはっとするほどの遅い入り。それでいて直後にテンポをつめるという小細工。フルトヴェングラーのブラ1の冒頭が思い出す。そういえば彼はフルトヴェングラーのもとでコンマスだった。
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