離婚訴訟
19世紀きっての大ヴァイオリニスト、ヨーゼフ・ヨアヒムの夫人はアマーリエといって、優れたコントラルト歌手だった。ドイツレクイエム初演の際にはヘンデルのアリアを歌った。
もちろんヨアヒムは夫人を愛したが、後年しばしば常軌を逸するほどの嫉妬心を燃やすようになった。年々エスカレートし、レッスンも取れない状況に陥って、とうとう離婚にまで発展した。そしてお決まりの訴訟だ。
実はヨアヒムが夫人との仲を疑った相手こそ、ブログ「ブラームスの辞書」で頻繁に話題にしている出版商フリッツ・ジムロックだった。
ヨアヒムの大親友だったブラームスは、ヨアヒム夫人に深く同情し慰める手紙を書いた。この手紙が、夫人の側から潔白の証拠として法廷に提出された。これにヨアヒムは激怒し、両者は絶交状態になり、回復には数年を要した。
激怒したヨアヒムだったが、親友のブラームスが夫人を潔白だと信じていたことを、心の底では喜んでいたという後日談もある。
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