ドイチュ番号
シューベルト作品を整理した音楽学者オットー・エーリヒ・ドイチュ(1883-1967)に因んでドイチュ番号と名付けられたシューベルト作品整理の体系のことだ。シューベルトにおいて「op」つまり作品番号は、必ずしも作曲順ではなく、出版順だ。また未出版や異稿、断片も多く作品全体を俯瞰するには機能不足である。その点を補うのがドイチュ番号で通常「D」と略記される。バッハでいう「BWV」やモーツアルトの「K」に相当する。D番号はほぼ作曲順で、最大値は990番だという。
生みの親ドイチュは、オーストリア人でシューベルト研究の泰斗。1914年に著した「フランツ・シューベルト-その生涯の記録」は、シュピッタの「バッハ伝」に比肩する金字塔だ。1939年には英国に亡命したが、その後もケンブリッジで研究を進め「シューベルト全作品の主題の年代順による目録」を1951年に出版にこぎつけた。これが「D番号」の根拠になっている。これによりシューベルトの受容が急速に進んだことは周知の通りだが、ドイツ語版の発行は1978年までずれこんだ。
この先ブログ上でシューベルトネタをこね回すにあたり、「D番号」のお世話になる関係で早い段階での言及は必須である。ちなみに「美しき水車小屋の娘」はD795、「冬の旅」はD911、「白鳥の歌」はD957である。個別の曲は末尾にハイフンを介して子番号が付与される。「菩提樹」はD911-5、「セレナーデ」はD957-4という要領だ。異稿は末尾にアルファベット小文字を付して区別する。断片を含む未完作品にも番号が律儀に与えられていたり、現在では他者の作品と判明している作品があるのはバッハのBWVと同じだ。
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