相乗効果
昨日の記事「シューベルトの歌曲を辿って 」で、大歌手ディートリヒ・フィッシャーディースカウ著の書物について述べた。グラムフォンへのシューベルト歌曲全集録音に先立つ作品解釈のために収集した楽譜や資料を分析した結果、1冊の本になったと彼自身が著作の中で述べている。そこでは録音が全歌曲作品でないことも律儀に言及する。いわく「テキストの内容から判断して男性に歌われない方がいい作品は対象から省いた」と。
先般の記事「探索の音源 」で紹介したシューベルト歌曲全集こそがまさにその果実だった。買い求めたのはドイツ版で日本語解説は無いのだが、こちらの書物を読めば演奏家本人の著述による解説が読めるということに他ならない。
いやもう本当にすごい。大歌手でありながら、知識の裾野が広大で目がくらむ。何よりも何よりもシューベルトへの愛がこぼれるほどだ。作品の一般的は知名度は度外視して、純粋に彼の興味の厚みがそのまま著述の量につながっている感じがする。シューベルトへの傾倒を別として目立つのは、テキストの供給者に対する温かで深い視線だ。それが大文豪であろうと無名の青年であろうと変わらない。
巻末の人名索引にはブラームスも出て来る。これによれば全部で15回ブラームスへの言及がある。有名作曲家の中ではベートーヴェンに次ぐ頻度だ。
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